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「三津さん……すまんのぉ。昨日寒い中俺の事追っかけて来てくれたけぇ体壊してもた……。」
高杉は少しにじり寄ると三津の手を握った。
「高杉さん?来てくれたんですかぁ……すみません……。布団にも入らずうたた寝してもて体冷やしちゃって。」
「だから俺追っかけて歩き回って疲れたからうたた寝してもたんやろ?」
「違う。桂さんが帰って来るのずっと待ってたんでしょ?三津さん。」
水を張った桶を持って戻って来た伊藤が暗い声で言った。瘦面treatment
その言葉に三津は笑みを浮かべて黙り込んだ。
「それで居間でうたた寝ですか?この真冬に……。薬すぐに調合しますね。
申し訳ないんですが今日はみんな予定が……その代わり晋作がついてます。」
久坂は額の手拭いを取って伊藤の持ってきた桶の水で冷やし直してまた乗せた。
「おう。ずっとおるけぇ安心して休め。」
「伊藤さんも来てくれたんや……ごめんなさい……迷惑かけて……。」
迷惑。その言葉に今は誰もが過敏だ。三津の事で迷惑に感じた事などない。
なのに三津は周りへの迷惑をずっと気にする。そこに理由があるのならそれは間違いなく桂だろう。
三津は律儀で健気で真面目だ。桂の為に見合う女になろうとしてるに違いない。
それで三津が自分を押し殺して,どれだけ傷付つこうが桂を一番に考えるんだ。
でもそんな三津を見てるのが辛い。誰もがそう思い始めた。
「三津さん。あなたの事を迷惑だなんて思う奴は誰一人としていません。
お願いだから……もう桂さんの為に自分を犠牲にするのはやめてもらえませんか?」
伊藤は涙ぐみながら三津に懇願した。「私もついて帰ります。だから高杉と一緒に長州へ行きませんか?
確かに高杉はすぐに投獄されるかもしれません。でも高杉の作った奇兵隊と言う物の屯所に居たらいい。
私も居ますし女中だって居ます。三津さんならすぐに仲良くなれます。一人で寂しく家で待つ必要なんてない。」
伊藤は三津の枕元に座って切々と訴えかけた。普段の伊藤らしからぬ様に久坂も高杉も口を半開きで見ていた。
「へ?何の話?」
三津は熱に浮かされているのに笑って伊藤を見上げた。
その案はちょっと面白いねなんて言ってのける。
「三津さん,とにかく今は充分な睡眠を取って栄養も摂って薬を飲んでまた寝て下さい。私と約束して下さい。」
久坂に言われて三津は笑みを浮かべたまま,こくこく頷いた。
「晋作悪いが頼むぞ。悪化しそうならすぐ乃美さんに知らせろ。」
「分かった。」
乃美と聞けば何があろうと拒否し続けた高杉が素直に頷いた。
それには久坂も伊藤も安心して名残惜しいが家を後にした。
「三津さん薬……の前に何か食わんとなぁ。お粥食えるか?」
「はい,自分でやりますから。」
三津が体を起こそうとしたのを高杉は無理矢理布団に抑えつけた。
「いけん!病人は大人しくしちょり!俺が作るけぇ待っちょき!
ちょっと煩くするかもしらんけど……。とっ!とにかく三津さんは動いちゃいけん!」
高杉は動くなと威嚇して台所へ行った。
『不安しかないけど……。』
それでも今は高杉を頼るしかない。
どんなお粥が出来上がるか楽しみに目を閉じた。
台所に踏み込んだ高杉はお櫃に入ったご飯,鍋に炊かれた煮物,味噌汁を見て口をきゅっと横一文字に結んだ。
『こんだけ……支えてもろうても……俺も政に必死になって蔑ろにしてしまうんやろか……。』
嫁に嫁にと言う癖に,実際迎えた時の事など想像がつかずにいた。
あんなにも執着を示す桂でさえ臥せた三津の傍にいない。
『結局男は女に甘えちょるんかの……。』
女は家を守って当たり前だと思っていた。自分の母親だってそうだったから。
でもこうしていざ台所に立っても何も出来ない。
『もっと有り難み持たんとな。はよ元気になってもらわんと。』
三津の為と自分を奮い立たせて慣れない料理に取りかかった。